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第23回国際墨画会展 受賞作品
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Click on the work to enlarge it and you can see the artists' name, the title of the work and the artist's comments.
外務大臣賞/ Foreign Minister Award
渡邉由杉
『パーム樹下のオニオオハシ』
この度は、外務大臣賞を受賞させていただきありがとうございます。
今回の画題はクチバシが黄色く体が漆黒のオニオオハシにしました。
カラフルなクチバシとは対照的に体がモノクロで、とても大きいクチバシを支えながらぴょんぴょんと歩く姿がなんとも愛らしくて、動物園に行くたびにいつか描いてみようと写真におさめておりました。
構図は横長、縦長色々試して最終的に縦長にし、2羽を一緒に遊ばせることにし、黄色などで差し色を入れることも考えたのですが、やはりここは墨画らしくモノクロで色味を出すことにして、8段階の墨色を調整しました。
昨年の孔雀作品で筋目描きを取り入れ、描いていてとても面白かったので、今回も、羽、脚、パーム樹の葉や幹はその技法を使いました。
パーム樹の尖った葉は、葉脈の直線がずれないよう、鉛筆型の木炭で1枚1枚下絵を描いてから筆で描いています。
下部の木は新聞紙を切り抜いて、ドーサ液と墨を使いスタンピングし、苔がふわふわと着いている様子を海綿でポンポンとおさえ、上部の木は、蓮筆を使った三墨法で木が木に巻きついている様子を表現し、こちらの苔はたらし込みで表現しました。
オオオニハシのクチバシはムラなく塗りたかったのでドーサを引いてから模様を入れています。
やっと自分の描きたいものが、以前より時間をかけずとも思うように描けるようになってきたと感じています。
この先自分が墨画で何をしていきたいのかをずっと考え続けており、自分自身を表現することになるだろうということはわかっているのですが、それが何なのかがまだよくわからないので、その本質はこの先も掘り下げていきたいと思います。
今回の画題はクチバシが黄色く体が漆黒のオニオオハシにしました。
カラフルなクチバシとは対照的に体がモノクロで、とても大きいクチバシを支えながらぴょんぴょんと歩く姿がなんとも愛らしくて、動物園に行くたびにいつか描いてみようと写真におさめておりました。
構図は横長、縦長色々試して最終的に縦長にし、2羽を一緒に遊ばせることにし、黄色などで差し色を入れることも考えたのですが、やはりここは墨画らしくモノクロで色味を出すことにして、8段階の墨色を調整しました。
昨年の孔雀作品で筋目描きを取り入れ、描いていてとても面白かったので、今回も、羽、脚、パーム樹の葉や幹はその技法を使いました。
パーム樹の尖った葉は、葉脈の直線がずれないよう、鉛筆型の木炭で1枚1枚下絵を描いてから筆で描いています。
下部の木は新聞紙を切り抜いて、ドーサ液と墨を使いスタンピングし、苔がふわふわと着いている様子を海綿でポンポンとおさえ、上部の木は、蓮筆を使った三墨法で木が木に巻きついている様子を表現し、こちらの苔はたらし込みで表現しました。
オオオニハシのクチバシはムラなく塗りたかったのでドーサを引いてから模様を入れています。
やっと自分の描きたいものが、以前より時間をかけずとも思うように描けるようになってきたと感じています。
この先自分が墨画で何をしていきたいのかをずっと考え続けており、自分自身を表現することになるだろうということはわかっているのですが、それが何なのかがまだよくわからないので、その本質はこの先も掘り下げていきたいと思います。
文部科学大臣賞 / MEXT Minister's Award
伊藤順子
『モンゴルの馬』
この度、文部科学大臣賞をいただけたことは、望外の喜びです。
この作品は、趣味の乗馬好きが高じて訪れたモンゴルで見た景色を描いています。視界に人工物が入ることなくどこまでも続く草原と、意外にバリエーションに富んだ地形。そしてそこを自由に移動する動物達。モンゴルの景色を初めて見た私の感動が少しでも伝わればうれしく思います。
この作品では特別な技法を用いた挑戦をしているわけではないので、最も試行錯誤したのは馬の表現と風景のデフォルメ具合でした。最初は馬を線描きで、背景の森と山は山水画の雰囲気で木や岩を細かく描いてみたものの単調になってしまったため、いつもの私らしく要素と手数を減らして勢いでモンゴルの馬と景色の持つ力強さを表現することにしました。しかし愛する馬たちの美しさやモンゴルの雄大な景色を表現することは叶わず、心残りも多いです。今回の受賞を励みにこれからも馬とモンゴルをテーマにした作品は描いていきたいと思っています。
今後もこの賞に恥じない作品が描けるよう、さらなる精進をしていきたいと思います。
この作品は、趣味の乗馬好きが高じて訪れたモンゴルで見た景色を描いています。視界に人工物が入ることなくどこまでも続く草原と、意外にバリエーションに富んだ地形。そしてそこを自由に移動する動物達。モンゴルの景色を初めて見た私の感動が少しでも伝わればうれしく思います。
この作品では特別な技法を用いた挑戦をしているわけではないので、最も試行錯誤したのは馬の表現と風景のデフォルメ具合でした。最初は馬を線描きで、背景の森と山は山水画の雰囲気で木や岩を細かく描いてみたものの単調になってしまったため、いつもの私らしく要素と手数を減らして勢いでモンゴルの馬と景色の持つ力強さを表現することにしました。しかし愛する馬たちの美しさやモンゴルの雄大な景色を表現することは叶わず、心残りも多いです。今回の受賞を励みにこれからも馬とモンゴルをテーマにした作品は描いていきたいと思っています。
今後もこの賞に恥じない作品が描けるよう、さらなる精進をしていきたいと思います。
東京都知事賞 / Tokyo Governor's Award
小清水美千代
『瓢箪に感動』
昨年の夏に出会った、畑のまん中にある瓢箪棚。
青々と繁った葉で作られた日陰の下に、形も大きさも様々な沢山の瓢箪が ぷら〜んぷらんとぶら下がっていました。
《のどかだなぁ。平和とはこういう情景なのかなぁ》と想い、主役である瓢箪を描いてみたくなりました。
表現にこだわったのは、まだ若い実のおだやかな丸みとみずみずしい張り、ゴワゴワ厚みのある元気な葉、そして蔓の面白さです。
当初は実を数多く描いていたのですが、何枚か描く内に厳選してこの作品となりました。
これからも、また、描いてみたい瓢箪達です。
青々と繁った葉で作られた日陰の下に、形も大きさも様々な沢山の瓢箪が ぷら〜んぷらんとぶら下がっていました。
《のどかだなぁ。平和とはこういう情景なのかなぁ》と想い、主役である瓢箪を描いてみたくなりました。
表現にこだわったのは、まだ若い実のおだやかな丸みとみずみずしい張り、ゴワゴワ厚みのある元気な葉、そして蔓の面白さです。
当初は実を数多く描いていたのですが、何枚か描く内に厳選してこの作品となりました。
これからも、また、描いてみたい瓢箪達です。
国際墨画会大賞 / Association Grand Award
中野真紀
『実り』
この度はすばらしい賞に選出いただき、ありがとうございます。
作品は秋をテーマにカラスウリを中心とした構成を考えました。秋枯れの木々に色づいた烏瓜がぶら下がっている様子は目にも鮮やかで、作品にしたら綺麗だろうなと思いました。ついで実をねらう鳥たちも描いてみようと考えましたが、カラスウリは苦みが強く、好む鳥がなかなかいない。しばらく困りましたが、食いしん坊で有名なヒヨドリがカラスウリを食すことを知り、登場してもらうことにしました。
ヒヨドリは日本とその周辺地域に生息し、華やかさこそありませんが昔から日本では身近な鳥です。灰色のヒヨドリ達が赤々と染まったカラスウリのまわりでせわしなく動きまわる様子が、いかにも秋の風情が感じられると、作品のイメージが固まりました。
制作では、全体の構図と鳥の描写に締め切りぎりぎりまで手こずりましたが、最後には秋の雰囲気が伝わる作品ができたかなと思っています。
頂いた賞を励みに、今後も表現力・技術を高めるべく精進してまいります。
作品は秋をテーマにカラスウリを中心とした構成を考えました。秋枯れの木々に色づいた烏瓜がぶら下がっている様子は目にも鮮やかで、作品にしたら綺麗だろうなと思いました。ついで実をねらう鳥たちも描いてみようと考えましたが、カラスウリは苦みが強く、好む鳥がなかなかいない。しばらく困りましたが、食いしん坊で有名なヒヨドリがカラスウリを食すことを知り、登場してもらうことにしました。
ヒヨドリは日本とその周辺地域に生息し、華やかさこそありませんが昔から日本では身近な鳥です。灰色のヒヨドリ達が赤々と染まったカラスウリのまわりでせわしなく動きまわる様子が、いかにも秋の風情が感じられると、作品のイメージが固まりました。
制作では、全体の構図と鳥の描写に締め切りぎりぎりまで手こずりましたが、最後には秋の雰囲気が伝わる作品ができたかなと思っています。
頂いた賞を励みに、今後も表現力・技術を高めるべく精進してまいります。
国際墨画会準大賞 / Association Semi Grand Award
安部彩英
『ローマの夜/月に浮かぶ教会』
「ローマの夜/月空に浮かぶ教会」
Basilica di Santa Maria in Trastevere サンタ・マリア・イン・トラステヴェレ聖堂
この度は国際墨画会準大賞を頂き、誠に光栄に存じます。
ホームページから会を知り、初めて竹を描く体験に参加したのがちょうどこの時期、10年前です。
区切りの年に、このような大きな賞を頂けて大変うれしく、続けてきた時間を噛みしめています。
20年以上も前になりますがイタリアに住んでいたことから、毎年の出展にて、思い出と共に特徴ある風景を描いてきました。
第23回の題材に選んだのはローマ在住時によく散歩に行った近所の素敵な聖堂です。夜景が美しく、聖堂の広場はとても気持ちよく、人々も笑顔、何よりもこのエリアはピッツァが美味しいことが有名で、その味を思い出しています。再訪したい!
描いた季節は春の朧月夜、人々の雑踏から離れ、雲が流れて月がふと明るくなった静かな空に浮かぶ凛とした建築の美しさを想像して・・・。
歴史あるこの聖堂は改築を重ねながらも時を経て、現在壁画がかなり見えにくくなってきていますが、今回は過去の資料や写真を見つつ自分なりに復元を試みながら描きました。
麻紙に墨、顔彩の紫と青を混ぜ塗り重ねています。白く抜く部分はドーサ液と水の配合によって淡くぼかすところから真っ白に強く抜きたい月までを調整しながら「白抜きグラデーション」に挑戦しました。水多めのドーサ液にすると、線描きの濃墨は割としっかり載り、淡墨や顔彩は優しく弾いてくれて月明りの拡がりやふわっとした光の演出に効果的でした。その後、淡墨を何度も重ね塗り、乾いてからまた重ねる、を繰り返して墨の濃淡による光と夜空のグラデーションも大切に仕上げました。
聖堂と空との境界も分断し過ぎず、聖堂を夜空が穏やかに包む雰囲気を表現できたと思います。
ドーサ液の使い方も色々考えられそうです。これからも自分なりに研究を重ねながら個性のある作品に取り組んでいく所存です。
Basilica di Santa Maria in Trastevere サンタ・マリア・イン・トラステヴェレ聖堂
この度は国際墨画会準大賞を頂き、誠に光栄に存じます。
ホームページから会を知り、初めて竹を描く体験に参加したのがちょうどこの時期、10年前です。
区切りの年に、このような大きな賞を頂けて大変うれしく、続けてきた時間を噛みしめています。
20年以上も前になりますがイタリアに住んでいたことから、毎年の出展にて、思い出と共に特徴ある風景を描いてきました。
第23回の題材に選んだのはローマ在住時によく散歩に行った近所の素敵な聖堂です。夜景が美しく、聖堂の広場はとても気持ちよく、人々も笑顔、何よりもこのエリアはピッツァが美味しいことが有名で、その味を思い出しています。再訪したい!
描いた季節は春の朧月夜、人々の雑踏から離れ、雲が流れて月がふと明るくなった静かな空に浮かぶ凛とした建築の美しさを想像して・・・。
歴史あるこの聖堂は改築を重ねながらも時を経て、現在壁画がかなり見えにくくなってきていますが、今回は過去の資料や写真を見つつ自分なりに復元を試みながら描きました。
麻紙に墨、顔彩の紫と青を混ぜ塗り重ねています。白く抜く部分はドーサ液と水の配合によって淡くぼかすところから真っ白に強く抜きたい月までを調整しながら「白抜きグラデーション」に挑戦しました。水多めのドーサ液にすると、線描きの濃墨は割としっかり載り、淡墨や顔彩は優しく弾いてくれて月明りの拡がりやふわっとした光の演出に効果的でした。その後、淡墨を何度も重ね塗り、乾いてからまた重ねる、を繰り返して墨の濃淡による光と夜空のグラデーションも大切に仕上げました。
聖堂と空との境界も分断し過ぎず、聖堂を夜空が穏やかに包む雰囲気を表現できたと思います。
ドーサ液の使い方も色々考えられそうです。これからも自分なりに研究を重ねながら個性のある作品に取り組んでいく所存です。
村松美月
『三渓園の梅』
この度は、国際墨画会準大賞を頂き、ありがとうございます。
水墨画の基本は「四君子」ということで、昨年は「竹」、今年は「梅」をテーマに決めました。
梅の写生、芥子園画伝の臨画などをし、どのように描くか模索しました。その中で、老木、枝、花の表現の対比に美しさを感じ、表現したいと思いました。
また表現方法も、今まで没骨法で描く事が多かったのですが、今回は紙や描き方も変えてみました。
これからも、色々な画題や表現方法を勉強し、楽しんで描いていきたいと思います。
水墨画の基本は「四君子」ということで、昨年は「竹」、今年は「梅」をテーマに決めました。
梅の写生、芥子園画伝の臨画などをし、どのように描くか模索しました。その中で、老木、枝、花の表現の対比に美しさを感じ、表現したいと思いました。
また表現方法も、今まで没骨法で描く事が多かったのですが、今回は紙や描き方も変えてみました。
これからも、色々な画題や表現方法を勉強し、楽しんで描いていきたいと思います。
国際墨画会会長賞 / Association Chairperson's Award
岩切千恵
『漂着』
以前から時々やってしまう妙な癖があります
どこかの場所や場面が頭に浮かんでくる
その後なん度もくりかえし同じ場所を思い浮かべて頭から離れなくなり最終的にその場所に自分が移動してしまうような引っ張られるような気がして大急ぎでその場所(場面)のことを考えるのをやめる というものです
コメントを書くためにこの絵をあらためて眺めていたらその感覚がよみがえってきました
西から東へ長い移動のすえにたどり着いた行き止まりの島でその島の海岸線をふちどる野水仙の群生は自然の不思議を感じる遠い記憶の痕跡だと思います
眺める者もいないのに粛々とただそこに存在する風景の中に足を踏み入れて古い世界の空気を吸ってみたい
歴史を辿りながらワクワクして描いたので もしこの水仙の咲く海岸に
いつの間にか立っていたとしても怖いとは思わないでしょう
でもまだこちらでやりたいこともあるので帰れなくなったらこまるなと思います
どこかの場所や場面が頭に浮かんでくる
その後なん度もくりかえし同じ場所を思い浮かべて頭から離れなくなり最終的にその場所に自分が移動してしまうような引っ張られるような気がして大急ぎでその場所(場面)のことを考えるのをやめる というものです
コメントを書くためにこの絵をあらためて眺めていたらその感覚がよみがえってきました
西から東へ長い移動のすえにたどり着いた行き止まりの島でその島の海岸線をふちどる野水仙の群生は自然の不思議を感じる遠い記憶の痕跡だと思います
眺める者もいないのに粛々とただそこに存在する風景の中に足を踏み入れて古い世界の空気を吸ってみたい
歴史を辿りながらワクワクして描いたので もしこの水仙の咲く海岸に
いつの間にか立っていたとしても怖いとは思わないでしょう
でもまだこちらでやりたいこともあるので帰れなくなったらこまるなと思います
田島銀粋
『雪景色鳳凰堂(宇治平等院)』
この度は、国際墨画会会長賞を受賞させて頂きありがとうございます。
平等院鳳凰堂、その優美な造形、約1000年前に建立された建造物や仏像の時代を超越した美に魅せられて一度は描きたいと思っていました。その美しさを表現するにあたり、迷わず建物の朱が引き立つ白の雪景色としました。建物のように複雑な形状のものは下絵をまず描きますが、今回は大きい絵のため50cmの定規でも短かく、消失点もはるか図面の外となるため線の角度がうまく定まらず何度も線を引き直したり、下絵に和画仙を利用したため消しゴムで消すと穴が空くなど大変苦労しました。他の会員さんが模造紙を使用しているとのことで、模造紙であれば消しゴムで消したくらいでは穴はあかないと思うので次回から使ってみようと思います。
雪は紙の白地を活かすとともに、白抜き液と胡粉を用いました。麻紙だと白抜き液でうまく抜くことができず画仙紙を使うことが多かったのですが、今回は白抜き液の塗布後にアイロンをかけることにより上手く抜けることが分かり麻紙で描くことができました。
全紙の麻紙の保存状態が悪く折れ線がしっかり入っておりアイロンでは折れ線が取れず、またF30の麻紙しかなく応募規定上、紙を切らねばならなかった。画仙切りで全紙1/2のサイズに紙を切る(細長く縁を取り除く)のが意外に難しく紙をだめにしてしまいました。結局、自分で切るのは諦めて鉛筆で切り取り線を引いて軸装時に業者に裁断を依頼することにしました。
顔彩を用いた裏打ちは自分としてはほぼ初であり吉祥の顔彩は膠成分が少なく裏打ちで流れるリスクがあるので、膠を混ぜて描きました。しかし、最後に黄色を用いた部分の色が定着せず上から墨で積墨しても色がティッシュについてしまう状態。描きなおす気力も残っておらず業者にフィキサチーフの塗布を依頼し裏打ちすることとし、そのまま提出しました。
今回は軸の布地希望で金に近い色としましたが、その場合無地がなく織り柄模様となりました。絵の雪模様と合わせうるさくならないか心配でしたがゴージャス感があってよいと思います。
最後に雪の大きな白い余白部分に墨を誤って垂らしてしまいかなり動揺しましたが、うまく陰影として表現することができました。
今回も作品制作を通じて、多くを学ぶことができました。現在、水墨画を学ばれている方々も作品展に応募するだけでもいろいろと勉強になりますので是非チャレンジしてみて下さい。
平等院鳳凰堂、その優美な造形、約1000年前に建立された建造物や仏像の時代を超越した美に魅せられて一度は描きたいと思っていました。その美しさを表現するにあたり、迷わず建物の朱が引き立つ白の雪景色としました。建物のように複雑な形状のものは下絵をまず描きますが、今回は大きい絵のため50cmの定規でも短かく、消失点もはるか図面の外となるため線の角度がうまく定まらず何度も線を引き直したり、下絵に和画仙を利用したため消しゴムで消すと穴が空くなど大変苦労しました。他の会員さんが模造紙を使用しているとのことで、模造紙であれば消しゴムで消したくらいでは穴はあかないと思うので次回から使ってみようと思います。
雪は紙の白地を活かすとともに、白抜き液と胡粉を用いました。麻紙だと白抜き液でうまく抜くことができず画仙紙を使うことが多かったのですが、今回は白抜き液の塗布後にアイロンをかけることにより上手く抜けることが分かり麻紙で描くことができました。
全紙の麻紙の保存状態が悪く折れ線がしっかり入っておりアイロンでは折れ線が取れず、またF30の麻紙しかなく応募規定上、紙を切らねばならなかった。画仙切りで全紙1/2のサイズに紙を切る(細長く縁を取り除く)のが意外に難しく紙をだめにしてしまいました。結局、自分で切るのは諦めて鉛筆で切り取り線を引いて軸装時に業者に裁断を依頼することにしました。
顔彩を用いた裏打ちは自分としてはほぼ初であり吉祥の顔彩は膠成分が少なく裏打ちで流れるリスクがあるので、膠を混ぜて描きました。しかし、最後に黄色を用いた部分の色が定着せず上から墨で積墨しても色がティッシュについてしまう状態。描きなおす気力も残っておらず業者にフィキサチーフの塗布を依頼し裏打ちすることとし、そのまま提出しました。
今回は軸の布地希望で金に近い色としましたが、その場合無地がなく織り柄模様となりました。絵の雪模様と合わせうるさくならないか心配でしたがゴージャス感があってよいと思います。
最後に雪の大きな白い余白部分に墨を誤って垂らしてしまいかなり動揺しましたが、うまく陰影として表現することができました。
今回も作品制作を通じて、多くを学ぶことができました。現在、水墨画を学ばれている方々も作品展に応募するだけでもいろいろと勉強になりますので是非チャレンジしてみて下さい。
国際墨画会顧問賞 / Association Advisor's Award
佐々木舞
『白龍図』
この度は、国際墨画会顧問賞という名誉ある賞をいただき、大変有難く光栄に存じます。
「白龍図」につきましては、実は私の干支が辰年でして、さらには還暦という節目を迎える年になりまして、ならば龍を描くべきであろうと臨んだものでした。おかげさまで特別なものとなりました。深く感謝申し上げます。
2年程前に、同じ辰年の方の絵を描く機会がありまして、それは人物が龍を背負っているような絵にいたしました。
せっかくならば、辰年同士のパワーを込めるという意味合いからもその絵から派生したもの、人物の後ろにいた龍を表に出す構図にしたのが、今回の作品でございます。
12年後の辰年の時に再び龍図に取り組めることを夢想しつつ、健康に留意し、更に精進を重ねて参りたいと存じます。
この度は誠にありがとうございました。
中国美術報社賞 / Art News of China Award
マイクスナー圓尾晴子
『泰山木』
頭の中で繰り広げられるビジョンをどう咀嚼して、2次元の紙に落としていこうか。ぐるりぐるりと頭を捻ることを繰り返す中、ある時ピタッと全てが肌に馴染む瞬間、これが起こるんです!それが作品の下書きになり、描き続ける中でしばしば道に迷い、先生や仲間の助言に先導され、自分を疑いながらやっと一枚の絵の形になります。私の頭の中でグチャと一度潰して再構築したカリフォルニアの夜に開花する泰山木、香りが届きますでしょうか。
朝日新聞社賞 / Asahi Shimbun Company Award
岩口りつ子
『渓流』
山奥の美しい渓流に住むカワガラス。もちろん見たことありませんが、一枚の小さな写真に惹きつけられて構想を練りました。岩や水はなんとか描き直しがききますが、とりは一発勝負。何回も何回も描いて練習して、でも気にいらず・・・最後はえいやッ、でした。
清水由美子
『探山水与江華(ジェニファーと山水に遊ぶ)』
この度は朝日新聞社賞という素晴らしい賞を頂きありがとうございます。
中国山水は水墨画を始めたからにはいつかは描いてみたいと思っていた画題でした。
「探山水与江華」は、盲導犬のパピーウォーカーとして1年間育てた仔犬の江華(ジェニファー)と山や川を訪ねた時の思い出を絵の中に残せたらと思い作成しました。
紙は滲み留めのドーサを引いた古紙色を使いました。
途中何度も構図や墨の濃淡に迷い、やはり山水画を描くには早すぎたのだと悩みましたがその度先生に励まして頂き出展する事ができました。
皆さまの支えがなければこの作品は出来上がらず、私にとって特別な作品となりました。
中国山水は水墨画を始めたからにはいつかは描いてみたいと思っていた画題でした。
「探山水与江華」は、盲導犬のパピーウォーカーとして1年間育てた仔犬の江華(ジェニファー)と山や川を訪ねた時の思い出を絵の中に残せたらと思い作成しました。
紙は滲み留めのドーサを引いた古紙色を使いました。
途中何度も構図や墨の濃淡に迷い、やはり山水画を描くには早すぎたのだと悩みましたがその度先生に励まして頂き出展する事ができました。
皆さまの支えがなければこの作品は出来上がらず、私にとって特別な作品となりました。
橋本 肇
『不易流行~深谷アウトレット~』
この度は、身に余る賞を賜りありがとうございました。
私は、もともと書を習っておりましたが、水墨画の優雅さを取り入れた作品も描きたいと思い、本会に入会し、9年になります。
今回の作品は、地元である深谷に着眼し、新たにオープンした深谷花園アウトレットを描くことにしました。描くにあたり、新しい巨大建築物を観察していると、その延長上に美しい夕日と照らされている秩父連山が目に停まり、深谷花園の美しい自然風景も描こうと思いました。車は、私のクルマで、何度描いてもうまくいかず、悩ましい被写体ですが、ざっくりと墨の濃淡をいかすことに執着しました。画題とコメントは、「不易流行(本質を忘れず新しい変化を取り入れる)」とし、新しいアウトレットから夕日と秩父連山を見ての想いを漢詩風に入れてみました。
この3月で仕事も引退し、自分としても感慨深い作品となりましたが、朝日新聞社賞という身に余る賞も賜り、花を添えていただき御礼申し上げます。ありがとうございました。
私は、もともと書を習っておりましたが、水墨画の優雅さを取り入れた作品も描きたいと思い、本会に入会し、9年になります。
今回の作品は、地元である深谷に着眼し、新たにオープンした深谷花園アウトレットを描くことにしました。描くにあたり、新しい巨大建築物を観察していると、その延長上に美しい夕日と照らされている秩父連山が目に停まり、深谷花園の美しい自然風景も描こうと思いました。車は、私のクルマで、何度描いてもうまくいかず、悩ましい被写体ですが、ざっくりと墨の濃淡をいかすことに執着しました。画題とコメントは、「不易流行(本質を忘れず新しい変化を取り入れる)」とし、新しいアウトレットから夕日と秩父連山を見ての想いを漢詩風に入れてみました。
この3月で仕事も引退し、自分としても感慨深い作品となりましたが、朝日新聞社賞という身に余る賞も賜り、花を添えていただき御礼申し上げます。ありがとうございました。
墨運堂賞 / Bokuundo Award
大田千鶴
『牡丹燕図』
この度は墨運堂賞を頂きありがとうございました。
牡丹で有名な地元の山寺の多種多様な花に魅了され描きました。鉤勒法と没骨法の花の配置や構図に苦心しました。
牡丹で有名な地元の山寺の多種多様な花に魅了され描きました。鉤勒法と没骨法の花の配置や構図に苦心しました。
星野秀岳
『荒海や佐渡に横たふ天の河』
この度は墨運堂賞と輝かしい賞を頂戴し誠に光栄に思います。
作品は「荒海や佐渡に横たふ天の河」。
長年俳句は親しんで参りましたが中でも尊敬する芭蕉さんの代表的なこの俳句、どうしても作品に致したく取り組みました。現地の佐渡にスケッチに行き、たっぷり空気感も味わい作品作りには大いに役立ちましたが、荒い波の描き方には最後まで苦労させられました。
半年かけて考え、芭蕉さんの気持ちになり繰り返し描くのは大変でしたが充実した時間でもありました。
作品は「荒海や佐渡に横たふ天の河」。
長年俳句は親しんで参りましたが中でも尊敬する芭蕉さんの代表的なこの俳句、どうしても作品に致したく取り組みました。現地の佐渡にスケッチに行き、たっぷり空気感も味わい作品作りには大いに役立ちましたが、荒い波の描き方には最後まで苦労させられました。
半年かけて考え、芭蕉さんの気持ちになり繰り返し描くのは大変でしたが充実した時間でもありました。
吉田眞樹
『晩夏の空間Ⅰ』
この度は「墨運堂賞」をいただき、大変光栄に思います。
青墨、茶墨とも長年使わせていただいており、この作品も墨運堂社の
青墨を使っております。
この作品は、昨年の夏、自宅で見た枯れかかった向日葵に心惹かれ、描きとめた小さなスケッチがもとになっています。
シンプルな作品なので構図が特にポイントだと考え、香取先生にアドバイスをいただき、この作品が完成いたしました。
賞をいただいたこの作品と「晩夏の空間2」とで1対の作品として出品いたしました。晩夏の空間を感じていただけましたら幸いです。
青墨、茶墨とも長年使わせていただいており、この作品も墨運堂社の
青墨を使っております。
この作品は、昨年の夏、自宅で見た枯れかかった向日葵に心惹かれ、描きとめた小さなスケッチがもとになっています。
シンプルな作品なので構図が特にポイントだと考え、香取先生にアドバイスをいただき、この作品が完成いたしました。
賞をいただいたこの作品と「晩夏の空間2」とで1対の作品として出品いたしました。晩夏の空間を感じていただけましたら幸いです。
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